マタイ26章69-27章14節
ペテロはイエス様のことが気になって、完全に逃げ去ることもできずにこっそり後をついて行きます。しかし、彼の顔はすでにある程度知られていたようです。ですから、彼を見つけた人々から「あなたもイエスといっしょにいた」と指摘を受け、大慌てでそれを打ち消します。
イエス様の予告が成就しようとしています。
イエスは彼に言われた。「まことに、あなたに告げます。今夜、鶏が鳴く前に、あなたは三度、わたしを知らないと言います。」(26:34)
ペテロはガリラヤ地方の元漁師です。東北の三陸海岸の漁師さんが東京のど真ん中でズーズー弁を話すなら「あ、この人は東北の人だな」と周りの人はすぐに気づくでしょう。
しばらくすると、そのあたりに立っている人々がペテロに近寄って来て、「確かに、あなたもあの仲間だ。ことばのなまりではっきりわかる」と言った。すると彼は、「そんな人は知らない」と言って、のろいをかけて誓い始めた。するとすぐに、鶏が鳴いた。(26:73-74)
ペテロは、鶏が三度鳴く前にイエス様を知らないと言ってしまいました。しかし、よく読んでみると、この鶏が「のろいをかけて誓い始めた」ところで間髪入れずに鳴いたことが分かります。彼はそれを聞いて「ハッ」としたことでしょう。もし、このタイミングで鶏が鳴かなければ、彼はのろいの誓いを言い終え、自分自身に決定的な災いを招いてしまうことになったでしょう。
残念ながら、27章冒頭に出て来るユダは決定的な災いを自らに招きました。ユダもペテロもイエス様を裏切ったという意味では同じなのですが、結末は大きく異なっています。ペテロは立ち直り、初代教会のリーダーとなりました。
実は、イエス様はあらかじめこのように語ってくださっていました。
しかし、わたしは、あなたの信仰がなくならないように、あなたのために祈りました。だからあなたは、立ち直ったら、兄弟たちを力づけてやりなさい。」(ルカ22:32)
イエス様がこの祈りを祈ってくださっていたので、彼は大きな過ちを犯したにも関わらず立ち直ることができました。「最悪の一歩手前」で、この鶏の鳴き声に助けられたのです。
そこでペテロは、「鶏が鳴く前に三度、あなたは、わたしを知らないと言います」とイエスの言われたあのことばを思い出した。そうして、彼は出て行って、激しく泣いた。(26:75)
自分の愚かさ、優柔不断さ、不忠実さゆえに罪の方向へと傾き、それがエスカレートし、しかし、ギリギリのところで信仰へと引き戻される…。
私たちもこのように、「最悪の一歩手前」における神様の介入を経験しているのではないでしょうか。イエス様は私たちのためにも祈られました。
「あなたは必ず立ち直る。立ち直ったら、兄弟たちを力づけてやりなさい。」
※写真はヴィア・ドロローサ(苦難の道)にて撮影