死にゆく教会 ー見つめるべき現実ー
トム・S・レイナー博士*1による「死にゆく教会はなぜ死ぬのか?」(WHY DYING CHURCHES DIE)という記事が目に留まりました。我々日本人(のクリスチャン)は、物事を曖昧にする傾向があるため「死にゆく教会」「教会が死ぬ」と言った表現は避けることが多いでしょう。しかし、これはしっかりと勇気を持って見つめ、向き合うべき課題です。
元記事のリンクを貼った上で、要約(厳密な翻訳ではない)をしたいと思います。
レイナー博士の父親は、戦時中にタバコを覚え、以来40年間吸い続けていました。彼が58歳の時、医師は、今後深刻な事態へとつながるであろういろいろなサインが身体に顕れているのを見つけました。そして、大きく生活を変えなければこのまま肺ガンになり、早死にすると警告したそうです。しかし、残念ながらお父さんは生活を変えることができず、61歳で亡くなりました。
そのエピソードを紹介した上で、レイナー博士は、沢山の教会が同じ状況に陥っていると指摘します。博士は、教会の「医者」として多くの教会を診断し、コンサルティングしてきましたが、断固として治療を拒み、頑なに死に向かっていく教会があるのを見てきました。
それらの教会にある6つの特徴が記事の中で紹介されています。
1. 病気であること、重病であることを認めない
礼拝の出席者数がある時期から見て80%も減少した教会がある。その教会の中で、地域社会における福音の証し人として生きている人々は皆無である。また、彼らはこの20年あまり、誰かがイエス・キリストに立ち返り、信仰の告白をするのをほとんど見たことがない。しかし、彼らは「自分たちは大丈夫だ」「別に何も間違ってはいない」と言う。
2. "特効薬"を持った牧師を待ち望んでいる
「もしちゃんとした牧師を見つて招聘すれば我々は大丈夫だ」と考える教会もある。彼らは次々に牧師を交代させる。短い任期で交代した牧師たちは、教会が余りにもそのようなメンタリティに凝り固まっていることに失望して、その教会を後にした。そして、その教会は今日も特効薬を持った新しい牧師を探している。
3. 誤った責任転嫁をしている
私は最近、死に瀕している教会に残っているメンバーと会って話をした。彼らの窮状の原因は、地域社会の問題にあるとのことであった。地域住民たちは教会に来るべきなのに来ない…。あるいは教会の直面する困難の原因は、これまでの5人の牧師たちのせいかもしれない。いや、現代文化の問題ではないか…。そんな風に、責任は「外」にあると考えていると考えているのである。
4. いかなる変化も望まない
全く変化するつもりがないという教会もある。 全く…である。ある友人が、瀕死の状態の教会にいるメンバーたちと会うように私に依頼した。最初、彼らは非常に期待に胸踊らせている様子であった。私を、彼らの教会に希望を与える偉大な救世主だとでも思っていたようである。しかし、私が彼らに対して厳しい評価を伝え、特に、必要な変化について話した時、彼らの表情からは喜びが消え失せた。最後に、ある人がこう言った。「なぜ、各々が讃美歌を持参する代わりに、スクリーンに歌詞を映すことなどしなければならないのだ…」。驚きと残念な思いを抱きながら、私は半年後に閉鎖となるその教会を後にした。
5. 考える「打開策」が内向きである
考える「打開策」の焦点がすべて内向きなものであるという教会もある。時代と共に大きな変化をした地域社会に対してどのように働きかけをし、どのように福音を届ければよいかについて真剣に考えない。彼らの関心事は、今残っている教会員にとってより快適で好ましい教会の姿である。
6. 1985年(または72, 65, 59年)に戻ることを望んでいる
1985年(1972年、1965年、1959年)頃に戻ることを望んでいる教会。「あの頃は良かった」とノスタルジーに浸り、「あの頃は〜だったのに今は〜」とつぶやいている教会。
恐ろしいことに、このような教会の数が増えているとレイナー博士は語ります。そして、15年前よりも現代の文化ははるかに、このような「独りよがり(me-focused)」の教会に対して我慢をしてくれないだろうと。
「これらの教会に希望があるだろうか? これらの瀕死の教会は、実際に死んでしまうのだろうか?」と問いかけ、レイナー博士は次のように記事をまとめます。
私は、これらの状況の中に神が介入してくださるのを何度か見てきた。そのいずれものケースにおいて、その教会は神ご自身に対してもう一度向き直り、自分たち自身の好みや願望、人間中心の伝統を思い切って捨て去る決断をした。そうでなければ、残念ながら瀕死の教会のほとんどが実際に死に至るだろう。
私は心から祈る。あなたの教会がもし死に向かう途上にあるのなら、その教会が神ご自身の栄光のために、稀なる例外となっていくことを…。
「あなたには非難すべきことがある。あなたは初めの愛から離れてしまった。それで、あなたは、どこから落ちたかを思い出し、悔い改めて、初めの行ないをしなさい。」(ヨハネの黙示録2:4-5)
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*1:レイナー博士は、キリスト教の大手出版社である「ライフウェイ・クリスチャン・リソーセズ」のCEOで、南部バプテスト神学校の元教授。