道奥 MICHINOKU せみなりお

聖書を学び、聖書で考え、聖書に生きる

教会再生の具体的プロセス2: リーダーが教会再生の具体的方法についての理解を深める

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前回は、教会再生の土台となる「聖書的な教会観」「牧会哲学」を持つことについて記しました。これが教会形成の土台になります。第二のプロセスは、リーダーが教会再生の具体的な道筋を描き、どのような方法をとるかの理解を深めることです。

 

本質に基づいた具体性を目指して…

 

教会形成(再生)には、しっかりとした理念的土台が必要ですが、その上に「どのように建てるか」という実際的な道筋も不可欠です。

 

自戒を込めて言うのですが、教会の指導者たちの多くが「方法論ばかりに偏って本質を軽んじる」か「本質にこだわりながらも具体性が乏しい」かのどちらかに陥りやすいものです。皆さんはいかがでしょうか。ぜひ、「本質に基づいた具体性」を目指したいものです。

 

イエスは近づいて来て、彼らにこう言われた。「わたしには天においても、地においても、いっさいの権威が与えられています。それゆえ、あなたがたは行って、あらゆる国の人々を弟子としなさい。そして、父、子、聖霊の御名によってバプテスマを授け、また、わたしがあなたがたに命じておいたすべてのことを守るように、彼らを教えなさい。見よ。わたしは、世の終わりまで、いつも、あなたがたとともにいます。」(マタイ28:18-20)

 

大宣教命令と呼ばれることの多い箇所ですが、これは「弟子づくり命令」とも言うべき御言葉です。主が弟子たちに語っていることの中心は「弟子としなさい(make disciples)」です。ここから、教会は「人々がキリストの弟子とされ、その弟子がまた新しいキリストの弟子を生み出していくもの」であると言えるでしょう。これは牧会哲学、理念です。しかし、実際のところ、それをどのように行うかが分からなければ絵に書いた餅になってしまいます。

 

「愛し合う教会になる」「一人ひとりが霊的に成長する」「地域の人々に福音を届ける」などが、単なるキャッチフレーズで終わるのではなく具現化される必要があるのです。

 

人が救われ、成長するプロセスを具体的に描く

一人の人が救われ、キリストに似たものへと成熟していくには無数の段階があります。ある牧師は、以下のように段階を示しています*1

 

-6 自己充足している段階

-5 変化の必要、渇望を感じ始めている段階

-4 人生への答えを求めている段階

-3 自分とクリスチャンたちとの違いを考え始める段階

-2 キリスト教信仰について学んで理解していく段階

-1 キリストを信じる準備のできている段階

 0 クリスチャンとなる

+1 バプテスマを受け、教会のメンバーとなる

+2 霊的成長に必要な実際的習慣を身につける(祈り、ディボーション、献金など)

+3 賜物を発見し、人々に仕える

+4 人々に福音を分かち合う

+5 神の栄光という目的のため、バランスの取れた生き方をする。

 

「-6」と「+5」にいる人に対して、全く同じ働きかけをすることはナンセンスです。その人の段階にふさわしい助け、導き方があります。問題は、教会が各段階にある人々に対して適切な形で手を差し伸べることが実際にできているかどうかです。

 

教会のプログラム、ミニストリーをデザインする際、「人が救われ、成長していくプロセス」の各段階を意識することは極めて重要です。例えば、あなたの教会の「祈祷会」は、どの段階にいるどのような人々のためのプログラムでしょうか。あなたの教会の夏のキャンプ、秋の修養会、盛大に行われるコンサートやクリスマス集会は誰のためのものでしょうか…。各段階にいる人々が次のステップに進むことができるような学びのプログラムは、しっかりと用意されているでしょうか…。「どなたでもお越しください」と言いながら、「どなたにもあまり役に立たない」ようなプログラムになってしまっていないでしょうか…。このような問いについてしっかりと考える必要があります。

 

筆者が牧師を務める教会では現在、教会やキリスト教について全く知らない人々との接点を作る働き関心を呼び起こす働き、関心を持った人が入門的な内容を知るための学び、それを経て信仰の入り口に立った人がキリスト者としての基礎を確立するための学び…といった形で各段階にいる人々のためのプログラムを用意しています。

 

これを構想し始めてから、ある程度軌道に乗るまで(今も試行錯誤があるが)に10年ほどの時間がかかりました。遠回りのように思えますが、今、このプロセスが明確に描かれていることにより、私達のミニストリーは「空を打つような拳闘」にならずに済んでいます。

 

参考になる情報を収集し、咀嚼する

 

教会形成、弟子訓練などについて、しっかりとした聖書理解に基づいた実践的な書物にふれることは不可欠です。とは言え、日本語で読めるものとなるとどうしても数が限られますが…。

 

また、筆者自身にとって大変有益なものとなっているのは、「本質に基づいた具体性」を目指して先進的な取り組みをしている国内外の教会や牧師たちに出会い彼らから直接学んでいることです。

 

実際の牧会の有様(例えば、牧師と信徒との問答)を何度も見学しに行ったり、しつこく食い下がって多くの質問をぶつけ、それに答えてもらうことをしました。どんな礼拝をしているのか、どのような雰囲気と流れでバイブルスタディをしているのか、どんな風にリーダー訓練をしているかなどなど、百聞は一見にしかずです。(もちろん、すべてをそのままコピーするわけではありませんが…)

 

伝統と歴史を持ちながらも停滞・衰退している教会の再生に取り組むならば、それにふさわしいリーダーシップの執り方、段取りや物事の進め方があります。実際にそのような経験をしたリーダーから生の声を聴き、詳しく学ぶことほど役に立つものはないでしょう。

 

ネット記事や本を読んだり、セミナーに一度出たりしただけで「分かった!これはいい! よし、すぐにやろう!」と考えることを決してしないでいただきたいと思います。寿司を握るにしても、ピアノを引くにしても、ゴルフをするにしてもそんな簡単にマスターすることはできません。外科手術などはなおさらです。

 

表面的な情報収集をして、それを安易に適用しようとするなら、場合によってはそれによって教会を破壊することにさえなりかねないのです。それは、外科手術のYouTube動画を何度か見た人が実際のオペをしようとするようなものかもしれません。

 

広く深く丁寧な情報収集(特に、人から直接に得る生きた情報の収集)をし、それを御言葉に基づいて吟味・分析し、しっかりと自分のものとすべく咀嚼することに時間をかけていただきたいと思います。

 

あなたが教会のリーダーであるなら、まず、あなた自身が「自分たちがどこからどこへ、どのような道順で行こうとしているのか」をはっきりと知る必要があるのです。誰かに分かち合ったり、教えたりする“”に、時間と手間をかけて“まず”それをするのです。

 

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*1:この段階分けは、サドルバック教会のリック・ウォレン牧師によるもの。大変参考になるが、もし、神の側からの働きかけを見落として、このような見方だけを極端に強調するなら、救いと成長が人為的なものであるという誤解に陥るだろう。救いの業は、あくまで神の主権的な働きによるものである。それをしっかりと踏まえた上で、人間の側から見た際にはこのような(あるいはもっと細分化された複雑な)段階を経て人が救われ、成長していくことをよく理解し、その人の段階にふさわしい適切な助け・導きをしていくことが求められるだろう。