道奥 MICHINOKU せみなりお

聖書を学び、聖書で考え、聖書に生きる

第一列王12章

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聖書の歴史観

イスラエル民族は、創世記に出てくるヤコブ(別名イスラエル)の12人の息子たちを父祖として、12の部族で構成されています。その全ての部族を一つにして「統一王国」を築いたのがダビデでした。それが息子ソロモンの代で最盛期を迎え、その息子レハブアムの代で南北に分裂してしまいます。

 

11章にあったように、ユダ(ダビデの家)とベニヤミンの2部族とその他の10部族に分かれてしまうのです。今後、列王記は南ユダ王国と北イスラエル王国の歴史を記していきます。そこには大勢の悪い王たちが出て来ますが、これは聖書の真実性を裏打ちするものです。なぜなら、聖書は恥ずべき歴史も覆い隠すことなく赤裸々に書き記すからです。


ある人はことさらに日本の歴史を美化しようとします。ある人々は逆に過剰なほど過去を否定します。しかし、聖書は自由主義史観でも自虐史観でもなく、神の目から見た歴史を記します。それは「人間の罪と神の恵みの歴史」です。聖書が私たちに示しているのは、愚かで救い難い神の民の歩みとその民をあきらめない神の歴史なのです。その視点を持ち、自分たちに重ね合わせながら読み進めていきたいと思います。

 

ソロモンの息子レハブアムが王となりますが、彼は長老たちの進言を無視し、自分の同世代の仲間たちのアドバイスに従って政策を決定します。彼は民に対して権力を振るい、厳しい労役を課しました。ここで彼が、神ご自身に相談したという様子は見て取れません。民は苦役に苦しみ、反感を増し、やがて有力者であったヤロブアムと共に反乱を起こすのです。これが「北イスラエル王国」の始まりです。

 

「もし、レハブアムが、権威というものが民に仕えるためにあり、また、互いに喜んで仕え合うようにさせるためにあるのだということを正しく理解して答えたなら、結果は全く違ったものとなり、神の国の特徴であるべき統一が分裂されるということは決して起らなかったであろう。彼の優柔不断さは、素早い行動(今日)がしばしば生涯にわたって(いつまでも)影響を及ぼすことがあるのだということを知らないとうことを示す。」(ドナルド・ワイズマン)

 

北イスラエルの王となったヤロブアムは、南ユダ(ダビデの家)のレハブアムを恐れています。南ユダには神の都エルサレムがあり、神殿があるのです。北の人々がもし南の神殿に礼拝に行く際にレハブアムへと心がなびくのではないかと彼は考えました。

 

それでヤロブアムは「金の子牛」という偶像を造り、北の果てと南王国への通り道に設置します。ヤロブアムは分裂を起こし、偶像を造り、祭司になるべきでない人々を祭司とし、宮や祭りを勝手に作り出しました。この後、神とそのみことばに背いた歩みは「ヤロブアムの道」(15:30,34参照)と呼ばれました。

 

「統一」と「分裂」

イスラエルの歴史と照らし合わせて現代のキリスト教界を見るとき、非聖書的な「統一」と「分裂」があるように思えてなりません。

 

非聖書的な統一」とは、多くのキリスト教指導者たちが進める「エキュメニカル運動」(世界教会一致運動)「宗教多元主義」と呼ばれる他宗教との融和です。エキュメニカル運動は、カトリックとプロテスタントの接近とも言えますが、重要な教理や信仰的確信について妥協した上でなされる表面上の一致と言わざるを得ません。

 

また「宗教多元主義」は、キリスト教と他宗教の接近です。この立場を採る“キリスト教神学者”たちの中には「キリストの十字架だけが救いの道ではない」「キリスト教の神も、イスラム教のアラーも同じ神だ」ということを公言する人々が少なからずいます。これは、イスラエルが政略結婚等を通じてどんどん異教徒たちと同盟関係を結んで国力を拡大しようとしたことに通じます。


また、私たちは「非聖書的な分裂」「分派(セクト)主義」に気をつけなければなりません。あるクリスチャンたちは「自分たちこそ純粋で正しいのだ」と考えて孤立する傾向を帯びています。しかし、私たちは偽りの一致や融和に気をつけながらも、独善的な態度を戒めなければならないし、対話を重んじる必要があります。教理的立場の異なる人々や他宗教を信じる人々を、真理において妥協せず、しかし、尊敬を伴った態度で扱う必要があるのです。正しいのは人間ではなく、神ご自身とそのみことばだけであることを忘れてはなりません。

 

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