道奥 MICHINOKU せみなりお

聖書を学び、聖書で考え、聖書に生きる

既存の教会に赴く“新任牧師”は何を受け継ぐ?

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恥ずかしながら開店休業状態が長らく続いてしまったこのブログです。書きかけのシリーズもありますが、それはちょっと置いておいて、リハビリを兼ねて単発の内容を記します。

 

「既存の教会の新任牧師が受け継ぐ6つのこと」(Six Things You Inherit as a New Pastor at an Established Church)という英文記事を読みました。

 

タイトルの通りですが、既に確立された教会に新しく着任する牧師がどんなものを「受け継ぐ」ことになるのかをサム・レイナー氏*1が分かりやすく実用的にまとめてくれているので、それを紹介したいと思います。

 

churchanswers.com



1. 人を受け継ぐ

言うまでもなく新任牧師は、そこに以前からいる「人々」を牧会し、導くようになります。教会や建物ではなく、また、単なる組織でもなく、そこにいる人々の群れです。「そこにいる人々を愛すことがなければ、その人々を導く資格はない」とレイナー氏は語ります。

 


2. 文化を受け継ぐ

新しい人も長年のメンバーもいるでしょうが、いずれにせよ、それぞれの教会は独自の文化を持っていて、それは大抵、深く根付いたものです。「文化は人によって作られるが、それは一人の人間よりも大きなものだ。牧師を含め、個人がすぐに文化を変えることはできない」とレイナー氏は指摘しています。

 

教会の雰囲気、霊的な温度はそれぞれ全く違います。よく笑うかあるいはシリアスであるか、正面から議論し合うかそれとも物事を曖昧にするか、何かにつけて熱心に祈るか否か、計算や戦力を重んじるか否か、牧師をある種の権威を持つ存在として尊ぶか否かなどなど、教会それぞれにいろいろな文化があるでしょうね。

 

 

3. スタッフを受け継ぐ

もし、一定程度の規模がある教会ならば、前任の牧師の時代から働いていたスタッフを受け継ぐことになります。スタッフは、教会にいる人々や文化に大きな影響を与える存在です。新任の牧師よりも教会全体に強い影響力をもったスタッフがいるかもしれません。

 

日本の教会の多くは規模が小さく、有給の働き人は牧師のみという教会が多数だと思います。しかし、たとえば、教会学校の教師、賛美の奉仕者など、特定の働きの責任を担って無給で仕える“スタッフ”が存在することと思います。

 

 


4. スケジュールを受け継ぐ

レイナー氏の牧会していたある教会では、第二礼拝が10時55分に始まることになっていたそうです。理由を尋ねても誰も答えられないのに、その時間に始まることは自明のことでした。その他、○曜日は△△△会、第〜週は❑❑❑式、✗月には◇◇◇◇集会などのスケジュールが「なぜ?」という理由は問われるこなく固定化していることはよくあることです。

 

 


5. 期待を受け継ぐ

新任牧師は、教会にいる会衆の人数分の異なった期待を受け継ぐことになります。つまり、100人の教会では100種類の期待、30人なら30種類の期待です。その人々の理想、前の牧師の残像、好みなどに基づく期待、願望が新任牧師に投影されることになるのです。

 

この全てに答えていくことは生身の人間にとって不可能なことです。しかし、種々の期待があるということはしっかりと自覚しつつ、その期待が聖書の真理に沿ったものであるならばそれに応答することに努め、いらぬ期待については徐々に、適度に、裏切っていく(応えられないということを示していく)必要があります。

 

特に日本の教会では、牧師だけではなくその伴侶(“牧師夫人”と呼ばれることが多いだろう)への期待というものも存在するでしょう。私が見聞きする限り、そのほとんどは単なる慣習や思い込みに基づく無茶な期待であるように思います。そのような期待から伴侶を守っていくことも大切なことですね。

 


6. 伝統を受け継ぐ

何世代も続く良い伝統、霊的な遺産があります。同時に、捨て去るべき悪しき伝統というものも存在するでしょう。私自身、教会に着任した際にはその両方があることにすぐ気が付きました。でも、時間が経って気づいたことは、「良い伝統」「悪い伝統」をそんなに瞬時に見分けることできないということでした。

 

着任早々に「こんな伝統は一刻も早く無くした方が良い」と私が感じた事柄にも、時間が経ってみると「なるほど、これにはこういう意義があったのか。これが大切な伝統だ」と納得させられることがありました。見極めには時間が必要ですし、謙遜にその教会の歴史を学ぶ態度が求められます。

 

 

まとめ


サム・レイナー氏は、記事の最後に「新しい教会はあなたを歓迎してくれるだろう。最初の日、最初の週、最初の月、そして、おそらく最初の年はうまくいくだろう。この時間を用いて、あなたが受け継ぐものをよりよく理解してほしい」と語ってまとめをしています。

 

物事には「文脈」があります。新任の牧師(若くても経験豊かでも)が、その教会の歴史的・文化的な文脈を度外視して「こうあるべきだ!」と正論をいきなり振りかざしても、おそらくその牧会は長続きしないでしょう。

 

かといって、文脈の中に埋没してしまい、以前からあるものをただ単に維持・保持していくことに終始してしまってはならないでしょう。

 

新任の牧師が、これら多くのものを受け継いでいることを自覚しながら、時にはじっくり時間をかけてその重荷に忍耐し、時には大胆かつ有効にその遺産を活用し、主が託してくださっている宣教の使命によりよく応答する「教会の新しい時代」を築いていくことができるようにと切に願うものです。

 

 

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私は教会のメンバーです

私は教会のメンバーです

 

 

 

 

*1:牧師, チャーチアンサーズ代表。サム氏の父親であるトム・レイナー博士は教会再生等の分野でよく知られている。