先日、礼拝のメッセージでメトシェラの死去と洪水の年が同じという話をしましたが、後でどなたかが「このことは先生が発見したのだと思った」と仰っているのを聞いて、ちょっと焦りました。残念ながらそうではありません!
そこで、私がどんな風にメッセージを準備し、どのようなことに留意しながら語っているか「舞台裏」の話を少し…。
私は「新しい発見」があるように願いながら、丹念に聖書本文を読み、研究し、メッセージをするようにいつも努めていますが、そこでいう発見とは基本的に「あくまで自分にとっての新しい発見」です。「うわっ!すごい!」と思っても、様々な文献を確認してみるとだいたい99.99%の確率で既に他の誰かが発見している内容なのです。みなさん、ガッカリしたかもしれませんが、しょっちゅう新しい発見を連発する説教者がいたら、それは異端かもしれませんよ…。
先日の「メトシェラ」の話については数字を足せばわかる話なので、多くの学者たちが当たり前に指摘している内容です。一例として、改革派の神学者ジェームス・M・ボイスの注解を英訳して示しておきます。
エノクはメトシェラの誕生時に、洪水による破壊が地に訪れるという啓示を受け取ったと考えるのは自然である。神は、この息子の死までは洪水が来ないことを告げられた。神の明確な導きであったにせよ、彼自身の信仰による行動であったにせよ、いずれにしてもエノクはその子どもにメトシェラ(彼が死ぬとき、それは来るだろう)と名付けた。メトシェラが生きている間、洪水はとどめ置かれていた。しかし、彼が死んだとき、それはやって来たのである。
(James Montgomery Boice, Genesis : An Expositional Commentary, vol.1)
幸い、創世記に関しては注解書、解説書の類が豊富ですので、日本語、英語を含めて、40−50冊は手元で確認できる資料があります。さらに便利な聖書研究ソフトもあり、さらにオンラインにも信頼性の高い資料が多く公開されています。また、私が支持する説に対する反論、異論についても敢えて目を通すことを心がけています。
メッセージ中に、あまり多く学者や文献の名前を盛り込むと、説教ではなく講義のようになってしまうので極力控えています。もちろん、そのまま引用する際には出典を明らかにしますが。メッセージの後に「これこれと言っていましたが、それはほにゃららですか?」と質問してくださったら、一応答えられるように準備はしているつもりです。そのような作業をした上で、確信をもって「聖書はこう教えています」と言えるよう心がけています。
また、必ずしも断定できない内容を、参考までに述べる必要がある場合は「〜と思います」「現時点では〜と考えています」という話し方をするようにしています*1。
最近読んだ説教に関する書物の中で、最も刺激を受けたのは『なぜ説教の中心が神なのか』(ジョン・パイパー著、CBI press)*2です。
真の礼拝には、常にこの二つの側面があります。神を知性で理解すること、神を心から味わうことです。この二つを分けることはできません。神を心で味わうには、まずこの方を知る必要があります。しかし、この方を知った後に味わうことがなければ、神を侮辱していることになるのです。このように、真の礼拝には、知性で神を理解する部分と、心で感じる部分とがあるのです。……神のことばが礼拝の中で「説教」という形をとる理由とは、真の説教は、その方法と目的において、知性と感情の二つの側面を矛盾なくつなぎ合わせるからです。……本物の説教とは、ただの人の意見ではなく、神のことばの忠実な解説なのです。ひと言でいうなら、説教は歓喜に満ちた解説です。
(ジョン・パイパー『なぜ説教の中心が神なのか』まえがきより)
どうぞ、説教者のためにこれからも祈り続けてください。この働きを通して、神ご自身とその御言葉の素晴らしさが表わされ、聴くお一人お一人の人生に変革がもたらされ、神ご自身が喜ばれる歩みへとますます押し出されますように。
みことばを宣べ伝えなさい。時が良くても悪くてもしっかりやりなさい。寛容を尽くし、絶えず教えながら、責め、戒め、また勧めなさい。というのは、人々が健全な教えに耳を貸そうとせず、自分につごうの良いことを言ってもらうために、気ままな願いをもって、次々に教師たちを自分たちのために寄せ集め、真理から耳をそむけ、空想話にそれて行くような時代になるからです。しかし、あなたは、どのような場合にも慎み、困難に耐え、伝道者として働き、自分の務めを十分に果たしなさい。(2テモテ4:1-5)
The Supremacy of God in Preaching
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